歌作りには、
――曲先
――詞先
の2通りがあるといわれます。
「曲先」というのは、
――先に旋律を定め、それに歌詞を当てていく。
という作り方で――
「詞先」というのは、
――先に歌詞を定め、それに旋律を当てていく。
という作り方です。
昨今の歌作りでは――
概して――
もっぱら曲先であり――
詞先であることは、ほとんどなくなっているそうですが――
それでも――
たまに詞先と思われる歌を聴くことがあります。
曲先か詞先かの見分け方は――
それほど難しくありません。
よく考えたら、当然なのですが――
曲先なら、歌詞に何らかの歪みが生じ――
詞先なら、旋律に何らかの歪みが生じるのですね。
例えば――
曲先では、助詞や助動詞が省略されていたり、同じ語句が文意と関係なく繰り返されていたり――
詞先では、旋律が1番と2番とで少しだけ違っていたり、旋律が唐突な終わり方をしていたり――
よって――
それらの“歪み”を歌詞ないし旋律の中に同定することで――
曲先か詞先かを、だいたい掴むことができます。
……
……
ここ1~2年で気づいたのですが――
曲先の歌詞の“歪み”に慣れていると――
詞先の旋律の“歪み”が、ちょっと新鮮に感じられるのですね。
(あ、面白い)
と――
……
……
僕は――
旋律と歌詞とであれば――
歌詞のほうに、しぜんと関心が向かいます。
10代の時から、ずっとそうでした。
だからなのか――
――歌詞というのは、常に旋律に合わせて歪められるものだ。
と――
ずっと誤解をしていました。
――歌詞は、旋律の良さを活かすために、しばしば様式美が犠牲にされるのだ。
と――
……
……
そうではないのですね。
歌詞の良さを活かすために、旋律の様式美が犠牲にされることも――
ないわけではないのです。