マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

「あなたも性倒錯者だ」といわれたところで

 ――あなたも性倒錯者だ。

 と敢えて脅すことで――
 性倒錯への関心を引きだそうとする人たちがいます。

 なかなかに巧みな手法です。

 どこが巧みなのか――

 ……

 ……

 一つは、心理的な異常および正常の境界が常に曖昧であることを巧みに活用しているところです。

 心理的な異常および正常は――
 まるで連続体であるかのように繋がっていると考えられているのですね。

 しばしば喩えとして用いられるのが虹色です。
 虹の色彩は、紫から赤まで、まるで連続体であるかのようにみえます。

 それと同じで――
 心理の異常性や正常性も、まるで連続体であるかのように思われる――
 という考え方です。

 この考え方でいえば――
 どんなに心理の正常な人であっても、少しは異常なところをもっていることになります。

 つまり――
 どんな人でも、多かれ少なかれ、性倒錯者の要素をもっていることになります。

 ……

 ……

 もう一つ巧みなところがあって――
 それは、性倒錯が必ずしも心の病気とはいえないことを絶妙に突いているところです。

 一般に、心の病気は、本人が困っているか、周囲が困っているか、あるいは、双方が困っているかの、いずれかです。

 本人も周囲も困っていなければ――
 それは、病気とはいえません。

 よって――
 たとえ、どんなに性倒錯が甚だしくても――例えば、自身の性倒錯を題材に、一冊の本を書いたり、一本の映画を撮ったりするくらいに、甚だしくても――
 その性倒錯で本人が困っていなくて、周囲も困っていなければ――
 それは、心の病気ではありません。

 ……

 ……

 以上の2点から――
 いきなり、

 ――あなたも性倒錯者だ。

 といわれたところで――
 何ら驚くことでも戸惑うことでもないのですね。

 ――あなたも他人にはないユニークな性的興味が多少なりともある。

 くらいのことをいわれたに等しいからです。

 もちろん――
 それをいうほうも――
 そのことをよくわかった上で、いっているはずです。