マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

“君主の争い”が起こることの不安

 天皇家の血筋が父系で受け継がれてきたのは――
 天皇家に入ろうとする男同士の醜い争いを防ぐためではなかった、か――
 ということを――
 
 きのうの『道草日記』で述べました。
 
 ……
 
 ……
 
 概して――
 
 男は争いが好きだ、と――
 僕は思います。
 
 とくに――
 周囲を不安にさせるような争い方を好みます。
 
 男の争いは――
 凄惨かつ露骨です。
 
 放っておけば――
 敵方を根絶やしにしようとしてしまう――
 
 もちろん――
 女も争うことはありますが――
 
 周囲を不安にさせるくらいに凄惨かつ露骨に争うことは――
 ほとんどないように思います。
 
 ……
 
 ……
 
 ここで想定をしているのは、
 
 ――君主の争い
 
 です。
 
 君主が、別の家系の男によって、排除されるような争いです。
 
 そのとき――
 排除された君主は――
 ふつうは殺されます。
 
 君主制の歴史を振り返ってみると――
 たいていは、そうです。
 
 むしろ――
 当人が殺されるだけにとどまらず――
 
 家系ごと根絶やしにされるのが、ふつうです。
 
 それは――
 かなり周囲を不安にさせる争いといえます。
 
 きのうまで国家に君臨していた人物が――
 一族もろとも皆殺しにされるです。
 
 ――君主の争い
 
 とは――
 かくも凄惨で露骨です。
 
 ……
 
 ……
 
 一般論として――
 君主の争いが凄惨かつ露骨であるがゆえに――
 
 この国では――
 天皇家の血筋が父系で受け継がれてきたのではないか、と――
 僕は考えています。
 
 父系で受け継がれてきた、ということは――
 外から入ってこようとする男を、
 
 ――すべて弾き返してきた。
 
 ということです。
 
 その弾き返しの源泉力は――
 天皇家の内部に顕在していたのではなく――
 天皇家の外部に潜在していたのではないか、と――
 僕は考えています。
 
 すなわち、
 
 ――天皇家の人たちではなく、天皇家の周囲の人たちが、天皇家の“君主の争い”を目の当たりにすることで不安に苛まれることを徹底的に嫌ったために、結果として、天皇家の血筋は父系で受け継がれることになった。
 
 ということです。
 
 鍵は、
 
 ――不安
 
 という感情です。
 
 さらにいえば、
 
 ――“君主の争い”が起こることの不安
 
 という感情です。
 
 ……
 
 ……
 
 少し、いいかえましょう。
 
 天皇家の血筋が母系で受け継がれるということは――
 天皇家の内部へ、外部から、誰か男が入っていく、ということです。
 
 ひとたび――
 誰か男が天皇家に入っていけば――
 
 入り損ねた他の男が――
 黙ってはいないでしょう。
 
 ――君主の争い
 
 が起こるのは――
 時間の問題といえます。
 
 その危険性を思い――
 天皇家の周囲の人たちは――
 何よりも、
 
 ――不安
 
 を覚えたに違いないのです。