――子どもに大人が「まず学ばせたい」と思うことは人文科学である。
ということを、きのうの『道草日記』で述べました。
――子どもに大人が「まず学ばせたい」……云々
から真っ先に思い浮かぶことは、
――マシュマロ・テスト
でしょう。
1960年代から1970年代にかけて行われた心理学実験で、行った学者が所属していた大学の名前から、
――スタンフォード・マシュマロ実験(Stanford marshmallow experiment)
と呼ばれることもあります。
この実験の結論は、
――自制心の強い子どもは、そうでない子どもよりも、社会的に成功しやすい。
でした。
小学校に上がる前の子ども(4歳児)を静かな部屋に通し、マシュマロを目の前に1つ置きます――そして、「これをいま食べたら1つだけだが、あと少し(15分間)待てたら2つあげる」といいきかせ、子どもを一人にした上で、その子どもが待てるかどうかをみます。
結果は、
――3分の1ほどの子どもが待てた。
というものでした。
その後の追跡調査で、待てた子どもは待てなかった子どもよりも高校の成績の良かったことが――正確には、当時、アメリカで実施されていた大学進学適性試験の点数の良かったことが――確認されています。
よって、この実験の結果に基づく限り、
――子どもに大人が「まず学ばせたい」と思うことは自制心の有効性である。
といえます。
が――
近年――
このマシュマロ・テストの知見には疑義が示されています。
――マシュマロ・テストには育った家庭環境の裕福度が十分に加味されていない。
という疑義です。
スタンフォード・マシュマロ実験では、対象が大学の関係者に限られていました――このため、育った家庭環境の裕福度に大きな違いがなかった――
育った家庭環境の裕福度の違いを十分に加味すると、身も蓋もない結論を得るそうです。
すなわち、
――育った家庭環境の裕福な子どもは、そうでない子どもと比べて、自制心が強い。
という結論です。
この結論を採用するならば、
――子どもに大人が「まず学ばせたい」と思うことは裕福な家庭環境で暮らすことの心地よさである。
となります。
まさに、
――身も蓋もない結論
です。