――粋(いき)
が成り立つためには、体力や気力の充実が必要でしょう。
――色気の嗜(たしな)み
が「粋」です。
体力の充実は色気を研ぎ澄ませるのに必要であり、気力の充実は嗜みを練り上げるのに必要です。
ここでいう「体力の充実」とは、よく食べ、よく動くことです。
また――
ここでいう「気力の充実」とは、よく感じ、よく思うことです。
あえて曖昧な述べ方をするならば――
体力や気力のエネルギーのようなものを想定し、それらエネルギーが体の中や心の中を勢いよく吹き抜けている様子――
といってもよいでしょう。
――「粋」は色気や嗜みがもつ鮮烈さや脆弱さの具現化である。
と、きのうの『道草日記』で述べました。
「粋」の鮮烈さは――
体力や気力のエネルギーのようなものが激しく迸(ほとばし)っているところに由来していて――
「粋」の脆弱さは――
体力や気力のエネルギーのようなものが絶えず揺らいでいるところに由来している――
と考えられます。
流れというものは、たいていの場合は、迸って揺らいでいるのです。
誤解を恐れずにいえば――
「粋」という概念は、
――体力や気力の流れに生じる泡沫(うたかた)のようなもの
ということです。