――脳や心は、精巧な時計ではないものの、現在と過去との区別だけは正確にできる。
ということを――
きのうの『道草日記』で述べました。
実際には――
話は逆です。
脳ができるのは――少なくとも一次的にできるのは――感覚と“感覚の痕跡”との区別だけです。
脳が感覚と“感覚の痕跡”とを選り分ける際に――
心は、感覚を、
――現在
ととらえ、“感覚の痕跡”を、
――過去
ととらえている――
そういうことです。
脳や心に時の移ろいがあることを最初から想定し――
その移ろいの先と後とが脳や心――ひいては、意識の働き――に、どのような影響を及ぼしているのか――
というようなことを考え始めると――
事態は、みえにくくなります。
脳が感覚と“感覚の痕跡”とを選り分けることで、心は「現在」や「過去」という概念を作り出し――
さらには、それら概念を踏まえた上で、心は「想像」という名の思考を繰り広げ、「未来」という概念を作り出しました。
そして――
それら諸概念に論理的な整合性をもたらすために、
――過去から現在へ、現在から未来へと経過する時間
という概念を作り出した――
そのように考え始めると――
事態は、みえやすくなります。