――生理学は自然科学の女王である。
といういい方が妥当かどうか、との問いかけを――
きのうの『道草日記』で述べました。
もちろん――
このいい方は、
――物理学は自然科学の王である。
といういい方が基になっていますから――
まずは、その基になっているいい方「物理学は自然科学の王である」が妥当かどうかを吟味することが必要です。
――物理学は自然科学の王である。
といわれるのは――
現代人の自然観が、物理学の知見を抜きにしては成立しえないように感じられることに端を発していると考えられます。
例えば、
――力
という概念や、
――質量
という概念、
――場
という概念、
――量子
という概念――
そういった物理学の基本概念を抜きにして、現代人の自然観を語ることは――
事実上、不可能であるといってよいでしょう。
さらにいえば――
化学や地学といった学問の領域では、物理学の知見が、直接的ではないにせよ、根底を支えています。
また――
生物学の領域では、19世紀頃までは、物理学との関係性が明らかではありませんでしたが――
20世紀になって、最も生物的な現象と目されていた遺伝が、核酸という物質――生体高分子――の受け渡しで説明できることが判明し――
いずれは物理学によって根底を支えられるようになるであろうとの見通しが一気に広まりました。
以上を踏まえれば――
好き嫌いの問題は残るにせよ、
――物理学は自然科学の王である。
とのいい方に一定の妥当性を認めるのはかまわないのではないか、と――
僕は思います。
では――
このいい方に基づいて、
――生理学は自然科学の女王である。
ということの妥当性は、どうでしょうか。
生理学は本当に、
――女王
といえるのでしょうか。
あるいは――
「自然科学」という、
――王国
を、「物理学」という、
――王
と似たような意味で、たしかに、
――治めている
といえるのでしょうか。
……
……
続きは、あす――