――生理学は自然科学の女王である。
といういい方には――
色々と難点があるように思います。
第一に――
物理学を、
――王
に喩えるのはよいとして――
それを基に、生理学を、
――女王
に喩えるのは、はたして妥当なのか――
実は――
僕自身、「生理学は自然科学の女王である」といういい方に最初に触れたときには、
(まぁ、そんなものかもしれない)
と納得をしました。
納得をした理由は、
(生理は、物理に比べると、何となく柔らかそうだから――)
というものです。
一般に――
女性の体は男性の体に比べて柔らかいといわれます。
そのことからの連想でした。
かなり無垢な連想です――というより、乱暴な連想です。
たしかに、現代物理学が得ようとしている知見は、現代生理学が得ようとしている知見よりも、鋭利で確固たるものかもしれません。
が、そのことをもって、
――生理は物理より柔らかい。
というのは、ちょっと乱暴でしょう。
――生理とは、生命現象に見出せる物理である。
という考えがあります。
この考えに立てば、生理と物理とで、堅さや柔らかさは同じはずです。
仮に、生理が物理より柔らかかったとして――
なぜ生理学が女性で、物理学が男性に喩えられるのか――
その理由は、きわめて曖昧です。
――生理学にとって生理は“体”であり、物理学にとって物理は“体”である。
などといってよいものかどうか――
このような観点から、
――生理学
を、
――女王
に喩えるのは、適当ではないように思えます。
ところで――
……
……
――生理学は自然科学の女王である。
といういい方には、もう一つ看過できない難点があります。
それは、
――生理学は本当に自然科学なのか。
という点です。
続きは、あす――