――風邪ウイルスは、エイズ(AIDS, acquired immunodeficiency syndrome)ウイルスと違って、性急でない。
ということを――
きのうの『道草日記』で述べました。
エイズ・ウイルスに触れたついでに――
他のウイルスにも触れましょう。
例えば、
――エボラ・ウイルス
です。
――エボラ
とは中部アフリカを流れる河の名です。
この河の流域に住む住人が、突然の高熱や粘膜からの出血を特徴とする感染症を発しました。
1976年のことです。
この感染症の原因ウイルスとして特定をされたものが、今日、
――エボラ・ウイルス
と呼ばれています。
正確には、エボラ・ウイルス属に含まれるウイルスの1種として、認識をされています。
このウイルスは、凶悪です。
何といっても致死率の高さが驚異的です。
―― 30 ~ 90 %
それが――
エボラ・ウイルスの致死率です。
同じように凶悪なウイルスとして、
――天然痘ウイルス
が挙げられます。
天然痘の歴史は古く――
紀元前1300年代には、今日でいう地中海の沿岸で、すでに記録が残されています。
その後――
世界の各地で蔓延の記録が相次ぎました。
日本列島には、奈良期に入ってきたようです。
天平7年(735年)から同9年(737年)にかけ、今日の九州地方に端を発し、やがて全国で猛威を振るったと考えられています。
致死率は――
ざっと、
―― 30 %
です。
エボラ・ウイルスほどではないにせよ――
凶悪なウイルスであったといってよいでしょう。
その凶悪さが祟り――
天然痘ウイルスは、20世紀になって、ヒトにより根絶をされました。
ワクチンという医療技術が――
天然痘ウイルスを根絶に追いやったと考えられています。
この医療技術がヒトによって開発をされたのは――
間違いなく、
――天然痘ウイルスの凶悪さ
が原因です。
もし、天然痘の致死率が 0.3 %くらいであれば――
少なくとも天然痘が契機となってワクチンが開発をされることはなかったでしょう。
天然痘ウイルスがヒトによって根絶に追いやられることも――
なかったに違いありません。
このような凶悪さが――
風邪ウイルスにはないのですね。
もちろん――
7日前の『道草日記』で述べたように――
油断をすれば、命を落とすこともなくはないのですが――
エボラ・ウイルスや天然痘ウイルスに比べれば――
風邪ウイルスの致死率はゼロとみなせます。