――“細胞とウイルスとの関係”は2つの場合に分けられる。
ということを――
きのうの『道草日記』で述べました。
A:1つしかない“細胞の系統樹”の枝の幾つかに、幾つかの“ウイルスの系統樹”が接ぎ木をされている。
B:幾つかある“ウイルスの系統樹”のうちの1つに、1つしかない“細胞の系統樹”が接ぎ木をされている。
Aは、ウイルスが「生きている」という状態にある細胞の内部に組み込まれる理由をよく示しているが、
――なぜ、そのまま組み込まれ続けないのか。
の問いには答えず――
Bは、ウイルスが「生きている」という状態にある細胞の内部に組み込まれ続けない理由をよく示しているが、
――なぜ、組み込まれることになったのか。
の問いには答えない――
ということも、きのうの『道草日記』で述べました。
AもBも、どちらも一長一短があり――
どちらが正しいかということは一概にはいえません。
が――
現代の科学者たちの大まかな印象では、
――Aのほうが若干、優勢――
のようです。
それは――
Aの考え方を採る場合には、ウイルスが細胞の内部に組み込まれるに至った進化の機序を思いつくことが必要ですが――
それが、比較的、容易に思いつけるからです。
実は――
その“進化の機序”に着目をすることで――
Aは、さらに2つの場合に分けられます。
A1:細胞が、細胞であり続けるのに必要な最小限の遺伝情報を捨て去ることで、ウイルスへ進化を遂げた。
A2:細胞の体の一部が、細胞の遺伝情報の一部を伴って体から飛び出すことで、ウイルスへ進化を遂げた。
ここで――
A1 やA2 と同様の言葉を用い、Bを記し直しますと――
以下のようになります。
B:ウイルスのうち、1つだけ細胞へ進化を遂げたものがあり、他は全てウイルスへ進化を遂げた。
この考え方が、A1 やA2 に比べ、
――若干、劣勢――
とみられているのは――
もし、Bの考え方が正しいとすると――
ウイルスへ進化を遂げたものは、例外なく、細胞の内部に組み込まれるように進化を遂げた、と考える必要があるからです。
今日――
細胞の内部に組み込まれないウイルスというものは、みつかっていません。
よって――
細胞の内部に組み込まれるようには進化を遂げなかったウイルスというのが、当初は、絶対に存在をしていたはずです――なぜなら、当初はウイルスしか存在せず、細胞は存在していなかったのですから――
が――
どういうわけか、細胞の内部に組み込まれるようには進化を遂げなかったウイルスというのは、残らず絶滅をした――
そう考える必要があります。
これは――
細胞が、細胞であり続けるのに必要な最小限の遺伝情報を捨て去った、と考えたり、細胞の体の一部が、細胞の遺伝情報の一部を伴って体から飛び出した、と考えたりするよりは、
――少し無理がある。
と感じられます。
以上をまとめますと――
“細胞とウイルスとの関係”について、今日、優勢な考え方は、A1 やA2 であり――
それは――
要するに、
――まず先に細胞が出現をし、次にウイルスが出現をした。
という考え方であり、
――その逆ではない。
ということです。