マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

最も薬らしい薬とは?

 ――最も薬らしい薬を挙げよ。

 といわれたら――

 

 僕は――

 迷わず、

 ――抗生物質

 と答えます。

 

 細菌感染の薬です。

 

 ――抗菌薬

 ともいいます。

 

 ――個体

 を、

 ――都市

 とみなし、

 ――個体を構成する細胞

 を、

 ――都市の住民

 とみなす比喩は、感染や感染症の現実を生々しく伝えている――

 ということを、きのうの『道草日記』で述べました。

 

 この比喩では、

 ――細菌

 は、

 ――都市になだれこんだ動物

 に喩えられると――

 おとといの『道草日記』で述べました。

 

 この比喩において、

 ――抗生物質

 は、

 ――都市になだれこんだ動物だけを弱らせたり殺したりする毒

 に喩えられます。

 

 大切なのは、

 ――都市になだれこんだ動物だけを――

 という点です。

 

 ――都市の住民

 には害を及ぼさず、

 ――警察

 や、

 ――軍隊

 の活動にも支障をきたさず、むしろ、その活動を助けていく毒――

 それが、

 ――抗生物質

 です。

 

 この薬が、なぜ、

 ――最も薬らしい薬

 かというと――

 

 一般に、

 ――薬

 は、

 ――病気を治すもの

 という総意が世の中にあるからです。

 

 実際の医療で用いられる薬は――

 実は、

 ――病気を治すもの

 とはいい難いものが殆どなのですね。

 

 多いのは、

 ――症状を和らげるもの

 です。

 

 病気の根本的な原因は取り除かないが――

 病気の表層的な結果を紛れ散らしてくれる――

 それが、多くの薬の実態なのです。

 

 が――

 その事実は、医療従事者以外の人たちには、あまり知られていません。

 

 ――病気を治すもの

 それが、

 ――薬

 だと思っている――

 

 その思いに端的かつ率直に応えているのが、

 ――抗生物質

 です。

 

 よって――

 僕は、

 (この世の中で、最も薬らしい薬は抗生物質である)

 と考えています。