マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

細い繋がりで、思いがけず――

 僧侶で教育者の無着成恭さんが、ラジオで、

 「そりゃぁ、あんた。型(かた)がある人間が型を破ると『かたやぶり』、型がない人間が型を破ったら『かたなし』ですよ」

 と、おっしゃったのを――

 若き日の歌舞伎役者・十八代目中村勘三郎さんが聴いていらして――

 当時、劇作家で演出家の唐十郎さんが催された破天荒な舞台に強く惹かれていたお気持ちを巧く鎮めることができた――

 という話を――

 おとといの『道草日記』で述べました。

 

 この話は――

 中村勘三郎さんがメディアに語られた内容に由来するようです。

 

 中村勘三郎さんは、

 ――型があるから型破り、型がなければ、それは形無し――

 の言葉を座右の銘とされていました。

 

 その謂(いわ)れについて――

 テレビ番組のインタビューにお答えになったようです。

 

 僕自身――

 その番組を見聞きしたような記憶があるのですが――

 定かではありません。

 

 それは――

 それとして――

 

 この話に関わるお三方のうち、一番お若かった中村勘三郎さんだけが亡くなられているというのは――

 まことに痛ましい限りです。

 

 中村勘三郎さんは――

 急性呼吸窮迫症候群のために――

 2012年、57歳の若さで、この世を去られました。

 

 報道によると――

 食道癌を患われ――

 その治療の過程で、ウイルス性の肺炎に罹れたそうです。

 

 ――相手が悪すぎた。

 と、医学的にはいえます。

 

 急性呼吸窮迫症候群は――

 昨今の新型コロナ・ウイルス感染症の蔓延においても、主要な死因とみられています。

 

 ひとたび発症をすれば、当時も今も、救命は容易ではないのです。

 

 ……

 

 ……

 

 中村勘三郎さんの、

 ――型があるから型破り――

 の話は――

 人の心を強く打ちます。

 

 もちろん――

 それは、中村勘三郎さんのご活躍の特性によります。

 

 日本の伝統芸能の継承にとどまらず――

 古典歌舞伎の新解釈や新作歌舞伎の上演に積極的でいらしたばかりか――

 ミュージカルや映画、テレビなどの現代芸能の世界にも活躍の場を広げていらっしゃいました。

 

 まさに「型破り」の歌舞伎役者でいらっしゃいました。

 

 そんな中村勘三郎さんが、正面をきって「型破り」を語られたからこそ――

 この話は、人の心を強く打つに違いない――

 とはいえますが――

 

 (それだけが理由ではない)

 と――

 僕は考えています。

 

 この話には、思いがけない繋(つな)がりがあります。

 僧侶で教育者の無着成恭さんや劇作家で演出家の唐十郎さんとの繋がりです。

 

 しかも――

 その繋がりは、実は、それほど太くはなくて――

 

 いってみれば――

 どんな人でも、感じようと思えば感じられる細い繋がりです。

 

 そんな繋がりで、思いがけず――無着成恭さんや唐十郎さんのお名前が出てくる――

 

 それゆえにこそ――

 この話は人の心を強く打つのではないか――

 

 そう思うのです。