マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

その歌への返歌ではないか

 東日本大震災の復興支援を目的に作られた歌、

 ――花は咲く

 は、しばしば、

 ――チャリティーソング

 と呼ばれるが――

 ――応援歌

 と呼ぶ方が自然ではないか――

 ということを、きのうの『道草日記』で述べました。

 

 もちろん――

 応援歌として典型的でないのは明らかですが――

 

 (応援歌にも色々な趣向があっていい)

 と、僕は思います。

 

 ところで――

 

 ……

 

 ……

 

 この『花は咲く』への返歌として作られたのではないか、と――

 考えられている応援歌があります。

 

 2020年の東京オリンピックパラリンピックの応援歌、

 ――パプリカ

 です。

 

 2018年に制作・発表をされ、2019年にヒット・ナンバーとなりました。

 作詞・作曲・プロデュースは、シンガーソングライターの米津玄師さんです。

 

 発表の当初から、

 ――オリンピックの応援歌としては不自然だ。

 との指摘がされていたそうです。

 

 僕も、その通りと思います。

 

 が――

 これが2012年に発表をされた『花は咲く』の返歌であるとみなすなら、

 (すごく自然だ)

 と感じられるのです。

 

 ――パプリカ

 では、夏の日に花を抱えて誰かに会いに行こうとする語り手の心情が描かれています。

 この“花”は、『花は咲く』の“花”ではないか――

 

 そして――

 語り手が会いに行こうとしている「誰か」というのは、東日本大震災で亡くなった人ではないか――

 季節が夏なのは、東京オリンピックパラリンピックが夏季大会であることにちなんでいるだけではなくて、お盆にちなんでいるのではないか――

 そういう解釈が可能なのですね。

 

 実際に――

 2019年に発表されたミュージック・ビデオのアニメーションでは、東日本大震災津波の被害にあった東北地方の港町のような情景が描かれていて――

 20代くらいと思われる主人公たちが、子どもの頃に野山で一緒に遊んだ女の子に会いに行く様子が描かれています。

 

 その女の子は、いわゆる大人の目には映らずに――

 また、主人公たちが20代くらいになった後でも、あいかわらず、子どもの頃と同じ背格好をしているのですね。

 

 そして、何よりも――

 曲調が大きく変わっています。

 

 2018年に発表をされた『パプリカ』は、応援歌らしい明るめの曲調ですが――

 2019年に発表をされたミュージック・ビデオでは、鎮魂歌らしい物悲し気な曲調なのです。