――あらゆる病気の症状の原因が特定をされ、その治療方法が確立をされること
を、きのうの『道草日記』で、
――汎症根治(はんしょうこんち)
と呼ぶことにしました。
あくまでも便宜上の呼称です。
念のために述べ添えますと――
――汎症根治
という言葉は存在をしません。
僕が作りました。
さて――
……
……
最近は――
若くして医療を志す人が著しく増えているのだそうですね。
僕が10代であった30年前にも――
そのような傾向はありました。
当時――
父が、よくいっていました。
――大学の医学部は、昔は簡単に入学ができたが、今は、かなり難しくなっている。
と――
父は――
その30年前に――つまり、今から60年前に――大学の医学部へ入学をし――
今から30年前には、大学の医学部で教鞭をとっていました。
最近は、もはや、
――かなり難しくなっている。
どころの騒ぎではないのだそうです。
――学校の勉強が得意な子どもは、ほぼ全員が、いったんは大学の医学部を目指す。
などといわれているのだとか――
――だから、医学部受験の競争は、18歳人口が半減をしているにも関わらず、30年前と比べて、むしろ激しくなっている。
と――
――親や先生たちが、「とにかく医者になれ」と勧めるのだ。
とのことでした。
……
……
大人が子どもに、
――とにかく医者になれ。
と勧めることは――
そんなに創造的な教育方針ではありません。
が――
僕は、
(まあ、別に構わない)
と思います。
ただし――
その際に――
医療や医療を支える医学の目標が、
――不老不死
や、
――汎症根治
といった、非現実的で、やや後ろ向きな概念である、ということを――
同時に、きちんと伝えていく必要はあるでしょう。
医療の世界は、明るく、煌(きら)びやかではありません。
むしろ、暗く、燻(くゆ)っています。
それなのに――
大人が子どもに対して、医療の世界に入ることを手放しで勧めたりすれば、
――明るく、煌びやか
と誤解をする子どもが増えることは想像に難くありません。
――とにかく医者になれ。
と勧めるには――
それなりの責任が伴います。