マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

「とにかく医者になれ」の恐ろしさ

 大人が子どもに、

 ――とにかく医者になれ。

 というならば――

 医療や医療を支える医学の目標が、

 ――不老不死

 や、

 ――汎症根治(はんしょうこんち)

 といった、非現実的で、やや後ろ向きの概念であることも、きちんと伝える必要がある――

 ということを、おとといの『道草日記』で述べました。

 

 この点は――

 人生教育の観点から、

 (ものすごく大切なこと――)

 であると――

 僕は思っています。

 

 なぜか――

 

 ……

 

 ……

 

 医療や医療を支える医学の目標が、

 ――非現実的で、やや後ろ向き

 であることをよく弁えないうちに医療の世界へ飛び込んでしまったら――

 その後の人生の全てが、知らず知らずのうちに、

 ――非現実的で、やや後ろ向き

 となりかねないからです。

 

 これは、

 (大変に恐ろしいことだ)

 と、僕は思います。

 

 ……

 

 ……

 

 医療の世界に10年くらい身を置きますと――

 さすがに、

 ――不老不死

 については、「非現実的で、やや後ろ向き」の程度が甚だしいので、そうでもないのですが、

 ――汎症根治

 については、どうしても、その発想に縛られてくるのですね。

 

 恐ろしいのは、

 ――汎症根治

 の発想が含む「非現実的で、やや後ろ向き」の要素を、つい忘れてしまいがちになることです。

 

 医療の世界に入って10年にもなると――

 病気の症状を根本的に治しえた体験――

 つまり、

 ――症根治

 の体験――

 が、けっこう蓄えられてきます。

 

 こうした体験を蓄えるうちに――

 やがて、

 ――汎症根治

 も、

 ――いつかは実現をされるのではないか。

 との錯覚に囚われていくのですね。

 

 冷静に考えたら――

 それは、控えめにいっても、

 ――きわめて困難なこと

 と、わかるのですが――

 

 でも――

 なぜか冷静に考えることができなくなってしまうのです。

 

 ――いつかは、あらゆる病気の症状を根本的に治していけるようになるに違いない!

 と、つい熱く思い込んでしまう――

 

 これは――

 熱狂に浮かされて「非現実的で、やや後ろ向き」の危うさに気づけなくなるという意味では、

 (大変に恐ろしいことだ)

 と、僕は思っています。