マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

「スペース・オペラ」の「オペラ」とは?

 ――宇宙活劇(space opera

 は、しばしば、

 ――スペース・オペラ

 とカタカナで表記をされます。

 

 おそらく、多くの方がご存じのように、

 ――宇宙活劇

 は――

 そんなに浸透をしている表記ではありません。

 

 とくに、

 ――活劇

 という言葉が、そんなに浸透をしていない――

 

 念のために述べ添えますと、

 ――活劇

 は、

 ――冒険や戦闘、恋愛などの展開が目まぐるしい物語

 くらいに意味です。

 

 ところで――

 

 ……

 

 ……

 

 ――スペース・オペラ

 の「オペラ」とは、いったい何でしょうか。

 

 ――オペラ

 といえば、ふつうは、

 ――歌劇

 を指しますよね。

 

 ――活劇

 という言葉を当てても――

 よいものなのでしょうか。

 

 ……

 

 ……

 

 英語の、

 ――Opera

 は――

 もとはラテン語の「仕事」や「作業」を表す言葉「Opus」の複数形です。

 

 ここから転じて「作品」の意味が生じ――

 いわゆる歌劇が、

 ――Opera musicale(音楽的作品)

 と呼ばれるようになりました。

 

 その短縮形として、

 ――Opera

 という言葉が生まれ――

 これが英語としても用いられるようになったと考えられています。

 

 つまり、

 ――Space operaスペース・オペラ

 の、

 ――Opera(オペラ)

 というのは――

 もとは、

 ――作品

 くらいの意味であったのです。

 

 この「作品」という意味に、やがて、

 ――ありがちな物語、大衆に好まれる物語

 のニュアンスが加わります。

 

 20世紀以降――

 とりわけ、アメリカの英語圏で、

 ――Opera(オペラ)

 に侮蔑的な意味が生じ始めます。

 

 いわゆる西部劇の物語のうち、陳腐な類型に落とし込まれている作品が、

 ――Horse opera(馬オペラ)

 と呼ばれるようになったのです。

 

 また、同じアメリカで、

 ――Soap opera(石けんオペラ)

 という言葉も生まれました。

 石けんを作っている会社がスポンサーとなって、テレビやラジオの恋愛ドラマが数多く制作されたことが由来です。

 そのようなドラマのうち、物語が陳腐な類型に落とし込まれている作品が、

 ――石けんオペラ

 と揶揄をされたのですね。

 

 こうした風潮のなかで、

 ――Space opera(宇宙オペラ)

 という言葉も生まれてきました。

 1950年代のことだそうです。

 宇宙を舞台にしたサイエンス・フィクション(science fiction)のうち、物語が陳腐な類型に落とし込まれている作品が、

 ――宇宙オペラ

 と揶揄をされたのです。

 

 こうした経緯がありますので、

 ――スペース・オペラ

 は――

 少なくとも語義的には、

 ――馬オペラ

 や、

 ――石けんオペラ

 と並べて理解をしておく必要があるといえます。