――純虚数の速さで移動をする者にとっては、時間の流れは速くなる。
という仮定――自然科学的には、かなり怪しい内容の仮定――について――
おとといの『道草日記』で触れました。
どこが、どんなふうに怪しいのか――
……
……
そもそも、
――純虚数の速さ
というのが、
――かなり怪しい。
のです。
――速さ
というのは、速度の大きさのことで、通常は実数の値で表されます。
それを、
――純虚数で表そう。
というのですから、
――かなり怪しい。
のですね。
――純虚数の速さ
というのは、どういう意味か――
……
……
純虚数というのは、二乗して負になる数のことです。
虚数単位 i を用い、
a i
と表せます―― a は任意の実数で、虚数単位 i は二乗して -1 になる数です。
純虚数は、虚数単位 i の係数 a が大きくなるにつれ、実数が大きくなる向きとは直角の方向へ“大きく”なります。
本当は、純虚数に大きさは定義をされないので、「純虚数が大きくなる」といってはいけないのですが――
今は、わかりやすさを優先にして――
そのように記すことにします。
つまり、
10 i
は、
3 i
より“大きい”という意味で、「大きい」ということにします。
よって、
――純虚数の速さで移動をする者にとっては、時間の流れは速くなる。
という命題は、
――「実数の速さで移動をする」と「純虚数の速さで移動をする」とでは何が違うのか。
ということを念頭に置いて理解をする必要があります。
――実数の速さで移動をする。
というのは、この世界で普通に移動をすることです。
では、
――純虚数の速さで移動をする。
というのは、何を指すのか――
……
……
この世界では全く移動をしていないのに、どこか他の世界で移動をしている――
ということです。
いってみれば、
――異世界で移動をしている。
と、いうことでしょう。
つまり、
――純虚数の速さで移動をする者にとっては、時間の流れは速くなる。
というのは、
――異世界で移動をする者にとっては、時間の流れが速くなる。
というようなことです。
どこが、どんなふうに怪しいのか――
これで――
よくおわかりいただけるでしょう。