マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

「コペルニクス的転回」は使いやすい言葉

 ――コペルニクス的転回(Copernican Revolution)

 のことを、連日この『道草日記』で述べていたら――

 

 先ほど――

 身内の者に、

 ――「コペルニクス的転回」というのは、有名な言葉なのか。

 と訊かれました。

 

 てっきり――

 このサイトを連日みていたゆえの質問かと思って――

 話の続きを促しましたら――

 

 昨日・今日と読んでいた2冊の本に、たまたま「コペルニクス的転回」という言葉が各々1回ずつ出てきたのだそうです。

 

 ――地動説を唱えたコペルニクスなら知っていたが、「コペルニクス的転回」という言葉は初めて目にしたので、どれくらい有名な言葉なのかと思った。

 というのです。

 

 よって――

 ひとまず、僕のほうから、

 ――「コペルニクス的転回」という言葉は昔からある言葉だが、すごく有名な言葉というわけではないと思う。

 と答えておきました。

 

 ……

 

 ……

 

 それで思い当たったのですが――

 

 ……

 

 ……

 

 ――コペルニクス的転回

 というのは、わりと使いやすい言葉なのかもしれませんね。

 

 少なくとも、

 ――パラダイム・シフト(paradigm shift)

 よりは使いやすい――

 

 その理由は――

 おとといの『道草日記』で述べたように、

 ――コペルニクス的転回

 が、

 ――個人の精神史に起こる革命的な体験

 であるからです。

 

 個人の体験で完結をしうるので、

 ――コペルニクス的転回

 は、かなり扱いやすい概念なのですね。

 

 それに比べ、

 ――パラダイム・シフト

 は、学界や社会における事象ですから、個人の体験では完結をしえず――

 また、

 ――パラダイム

 の指す語義が、かなり曖昧なものですから――

 少なくとも語義を厳密に詰めるような場合には、なかなかに使い勝手が悪いのです。

 

 ――パラダイム・シフト

 の概念を世に問うたのは、20世紀アメリカの科学哲学者・科学史家トーマス・クーン(Thomas Kuhn)ですが――

 そのクーンでさえ、

 ――パラダイム

 の語義の不確かさを否めず――

 後年、

 ――専門母型(disciplinary matrix)

 という言葉で定義をやり直したそうです。

 

 が――

 語義が確かになったからといって、人々に広く受け入れられる、ということは決してなく――

 

 ――専門母型

 よりも、

 ――パラダイム

 のほうが――

 より正確には、

 ――パラダイム・シフト

 のほうが――

 今日、遥かに広く認知をされています。

 

 とはいえ――

 

 その意味するところは、

 ――コペルニクス的転回

 よりも随分とわかりづらい――

 

 少なくとも、

 ――コペルニクス的転回

 のほうが、

 ――パラダイム・シフト

 よりも、ずっと無難に使える言葉といえます。