マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

パラダイム・シフトにコペルニクス的転回は必要でない

 ――コペルニクス的転回(Copernican Revolution)は“個人の精神史に起こる革命的な体験”であり、パラダイム・シフト(paradigm shift)の一部に過ぎない。

 ということを、きのうの『道草日記』で述べました。

 

 このように述べると、

 ――パラダイム・シフト

 には、

 ――コペルニクス的転回

 が必要であるかのような印象を与えますが――

 そうではありません。

 

 ――パラダイム・シフト

 に必要なのは、

 ――ブレイクスルー(breakthrough)

 であって、

 ――コペルニクス的転回――個人の精神史に起こる革命的な体験

 ではないのです。

 

 例えば――

 おととい発表をされた2021年ノーベル物理学賞(The Nobel Prize in Physics 2021)の授与の対象は、

 ――複雑系の理解への先駆的な貢献(groundbreaking contributions to our understanding of complex systems)

 で――

 その対象の半分は、1960年代以降の、

 ――地球全体の気候の模式化

 でしたが――

 報道の内容を踏まえる限り――

 この“模式化”によって、

 ――地球温暖化の概念の確立

 というパラダイム・シフトが起こったと考えることは容易である一方――

 この“模式化”の背景に、受賞者ら個人のコペルニクス的転回が潜んでいたと考えることは困難です。

 

 もちろん――

 研究の進捗に伴って、

 ――抜本的な発想の転換

 は何回も迫られたに違いないのですが―― 

 それらは、おそらく、

 ――個人の精神史に起こる革命的な体験

 と呼ばねばならないような大袈裟な体験ではなかったでしょう。

 

 が――

 この“模式化”が、いわゆる、

 ――スーパーコンピュータ(supercomputer)

 のブレイクスルーを必要としていたことは明らかです。

 

 ――スーパーコンピュータ

 の開発は1960年頃と考えられています。

 

 ――地球全体の気候の模式化

 が試みられる直前です。

 

 よって――

 もし、

 ――スーパーコンピュータ

 が開発をされていなかったら――

 

 ――地球全体の気候の模式化

 は試みられることさえなく、

 ――地球温暖化の概念の確立

 が起こることは、なかったに違いありません。