マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

カントの十分に抑制の効いた主張

 18世紀プロセインの哲学者イマヌエル・カント(Immanuel Kant)が、

 ――国家は、現代以降、平和連合(foedus pacificum)を作って互いに戦い合わないようになり、やがて永遠平和(ewigen Frieden)が訪れることは、自明である。

 と考えたらしい――

 ということは、7月4日の『道草日記』で述べました。

 

 いわゆる、

 ――永遠平和

 に関するカントの主張の中で最も出色なのは、

 ――世界政府ではなく、平和連合がよい。

 という点を前面に押し出している点です。

 

 世界に、

 ――永遠平和

 をもたらすには、

 ――世界政府

 の樹立が最も確実である、と――

 つい人は考えがちですが――

 

 ごく簡単にいってしまうと――

 

 ――世界政府

 は実は危ない――

 とカントは主張をしたかったようです。

 

 その理由としてカントが挙げているのは、

 ――世界政府は脆い。

 ということのようなのですね。

 

 ――世界政府

 は容易に瓦解をしうる――

 

 よって――

 全ての国家が頑張って、

 ――世界政府

 の樹立にこぎつけても――

 その努力は報われずに、すぐに振り出しに戻ってしまう――

 ということです。

 

 が――

 カントは、

 ――世界政府

 の意義を否(いな)んでいるわけではありません。

 

 ――もし、世界政府が共和制を採るのであるならば、それが最も望ましい。

 とも主張をしているのです。

 

 要するに、

 ――世界共和国政府

 が最善であると、いっている――

 

 が――

 そうであるにもかかわらず、

 ――平和連合を目指せ。

 というのですね。

 

 この、カントの十分に抑制の効いた主張が世に出たからこそ――

 国際連盟第一次世界大戦後に発足をし――

 国際連合第二次世界大戦後に発足をしえた――

 と、いわれます。

 

 これほどまでに大きな規模で――

 哲学者の主張が実社会に貢献をしえた例を他に探すのは、

 (ちょっと難しいんじゃないか)

 と感じます。