短編物語集『堤(つつみ)中納言物語』の一編、
――虫愛づる姫君
の主人公・虫好きの姫が、武家の棟梁と出会い――
やがて、九州地方から朝鮮半島、中国大陸へ旅立っていく物語について――
きのうの『道草日記』で述べました。
とりあえず、
――九州地方から朝鮮半島、中国大陸へ――
としましたが――
それは、出会った武家の棟梁が九州に拠点を置いているからであり――
当然のことながら――
関東に拠点を置いている武家の棟梁でも――
物語の展開に、とくに支障はきたしません。
虫好きの姫が出会った武家の棟梁が関東に拠点を置いている場合は――
虫好きの姫は関東で蝗害(こうがい)に遭って――
その発生起源の謎に迫るべく、東北・北海道地方から樺太を経てシベリア大陸へ赴くような展開も十分に考えられます。
ここでいう、
――シベリア大陸
とは、ユーラシア大陸の東部のうちで中国大陸の北方に広がっている部分のことであり――
いわゆる、
――ロシア・シベリア地方
よりも広い概念です。
……
……
中国大陸かシベリア大陸か――
虫好きの姫は平安後期の女性です。
よって――
物語の紡ぎ手は、平安後期――11世紀から12世紀まで――において、中国大陸とシベリア大陸と、どちらが虫好きの姫の活躍を呼び込めそうかで判断をすることになるでしょう。
この頃の中国大陸は激動の時代です。
中国大陸で成立をした漢民族の国家が、満洲地域に興った異民族の国家によって南方へ押しやられる時代です。
一方――
この頃のシベリア大陸については、よくわかっていないようです。
シベリア大陸がロシアによって征服をされるのは16世紀のことです。
15世紀以前は、いわゆるシベリア先住民が暮らしていたと考えられます。
さて――
中国大陸とシベリア大陸と――
いったい、どちらが虫好きの姫の活躍を呼び込めるでしょうか。
……
……
この続きは、あす――