マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

虫好きの姫は、よく考え、よく伝えてはいるが……

 短編物語集『堤(つつみ)中納言物語』の一編、

 ――虫愛づる姫君

 の物語の主人公・虫好きの姫は――

 自然の事物に強い興味を示しながらも、実験や観察ではなく、論考や言説に関心をもっているように描かれている――

 ということを、きのうの『道草日記』で述べました。

 

 ――虫愛づる姫君

 は物語として停滞をしている――

 というは、10月4日の『道草日記』で述べていますが――

 その際に――

 その停滞の原因として、

 ――不用意に恋愛事をもちこんだこと

 を挙げました。

 

 それだけが原因ではない――

 ということです。

 

 もう一つ大きな原因があって――

 それが、

 ――虫好きの姫が、論考や言説に拘泥をしていて、実験や観察には、それほど魅了をされていないから――

 ということです。

 

 もし、虫好きの姫が実験や観察に魅了をされていれば――

 もう少し、行動が増えていたでしょう。

 

 物語の受け手を楽しませる行動です。

 

 何か新奇の装置を作りだしたり――

 どこか山野へ出かけて行ったり――

 

 が――

 虫好きの姫は殆ど行動をしません。

 

 物を作ったり、出かけたりはしない――

 

 代わりに――

 よく物を考え――

 その考えをよく伝えてはいます。

 

 が――

 それだけでは、物語は躍動をしない――

 

 主人公が、ただ論考や言説を繰り返しているだけでは――

 物語は、なかなか躍動の機会を得ないのです。

 

 とはいえ――

 虫好きの姫は、あくまでも平安期の貴族階級の若い女性として描かれています。

 

 そのような女性が、何か新奇の装置を作ったり、どこか山野へ出かけて行ったりすることは――

 通常はありえません。

 

 平安期の貴族階級の若い女性が、不用意に物を作ったり出かけたりすると――

 物語のリアリティは損なわれます。

 

 なので――

 9月29日の『道草日記』では、

 ――武家の棟梁と出会い、九州や関東へ旅立って、そこで蝗害(こうがい)に遭う。

 という展開を示したわけですが――

 

 もう一つ――

 別の展開がありえます。

 

 どのような展開か――

 

 ……

 

 ……

 

 続きは、あす――