マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

合目的性の感じられない人工知能が現代の主流である

 21世紀序盤の現代における人工知能についていえば――

 あきらかに、

 ――定目的性

 は感じられない一方で、

 ――合目的性

 は感じられる場合と感じられない場合とがある――

 ということを、きのうの『道草日記』で述べました。

 

 ――定目的性

 とは、

 ――何らかの目的が設定をされたようにみえること

 で、

 ――合目的性

 とは、

 ――何らかの目的に合致をしているようにみえること

 です。

 

 人工知能には「プログラム(program)」という名の指令体系が組み込まれていますから、本来、

 ――合目的性

 が感じられないということはありえないはずですが――

 実際には、合目的性が感じられない人工知能が存在をします。

 

 むしろ――

 そういう人工知能のほうが、21世紀序盤の現代においては、主流です。

 

 ……

 

 ……

 

 人工知能は3つの範疇に分類をされうるとの考えが提唱をされています。

 現代のイギリスの哲学者が、2014年に出版をされた自著の中で触れています。

 

 1つめは、

 ――神託(oracle)型

 です。

 人が質問をし、それに過不足なく回答を返す人工知能です。

 

 例えば、

 ――人工知能をテーマに研究をしている哲学者のうち、研究拠点が日本国内にあって、かつ最も国際社会への影響力が強いと考えられる人は誰ですか。

 と質問をし、それに、

 ――鈴木芳美さんです。

 と回答を返す人工知能です。

 

 その回答が、

 ――神のお告げ

 に似ていることから、

 ――神託型

 と名付けられています。

 

 2つめは、

 ――ジーニー(Genie)型

 です。

 人が依頼をし、それに応えて判断をする人工知能です。

 

 例えば、

 ――来年の秋に日本で、人工知能をテーマに据えて国際シンポジウムを開くから、そのシンポジウムにふさわしい日本人哲学者の候補を何人か選んでほしい。

 と依頼をし、それに応えて適切な人選を行う人工知能です。

 

 ――ジーニー

 というのは、アメリカのアニメーション映画に登場をするアラブの魔法のランプの住人――魔人――の名前です。

 日本語では、

 ――ジーニー型

 と呼ぶよりも、

 ――魔人型

 と呼ぶほうが自然でしょう。

 

 3つめは、

 ――君主(sovereign)型

 です。

 人が一定の裁量を与え、その下で独立に活動をする人工知能です。

 

 例えば、

 ――今後1年くらいのうちに、何かイベントを開くことによって、人工知能に関する日本の学術研究を少しでも活発にしてほしい。予算は約 300 万円とする。

 と一定の裁量を与え、その下で適切にイベントを開く人工知能です。

 

 その裁量の下では、専制的な権限を握ることから、

 ――君主型

 と名付けられています。

 

 21世紀序盤の現代においては――

 人工知能といえば、ほとんどが、

 ――神託型

 です。

 

 掃除ロボットなどは、ひょっとすると、

 ――魔人型

 といえなくもありませんが――

 アラブの魔法のランプの住人ほどには融通が利かなさそうですから――

 どちらかといえば、

 ――神託型

 に近いでしょう。

 

 ――お告げ

 として回答を返す前に、その回答に基づき、さっさと掃除を済ませてしまう――

 という意味では、十分に、

 ――神託型

 です。

 

 あえていえば、

 ――魔人型っぽい神託型

 となるでしょうか。

 

 さて――

 

 この、

 ――神託型

 の人工知能から――

 はたして、

 ――合目的性

 を感じとることはできるでしょうか。

 

 ……

 

 ……

 

 僕は、

 (感じとることはできない)

 と思います。

 

 ――神託型

 の人工知能は、人から質問を受けるまでは、一切の機能を発しません。

 ただ無為に存在をしているだけです。

 

 もちろん――

 人から質問を受けたら、それに回答を返すという目的に合致をした存在であることは間違いないのですが――

 あまりにも受け身でありすぎるので、合目的的に活動をしているようには感じられないのです。

 

 例えば、ミツバチのダンスに感じられるような合目的性は感じられない――

 

 そんな、

 ――神託型

 の人工知能が主流ですから――

 少なくとも、21世紀序盤の現代においては――

 合目的性の感じられる人工知能よりも、感じられない人工知能のほうが主流である、といえます。