――子どもは「夢(ゆめ)を持て」といわれるけれど、大人は夢は持たないの?
と疑問(ぎもん)に思った人がいたそうです。
今から 15 年くらい前のことです。
たしか、当時 10 才くらいの人であったかと思います。
その疑問に――
当時のぼくは、あまりキッチリとは答えられませんでした。
今なら――
次のように答えます。
――大人は、叶(かな)うか叶わないかが、すぐにはわからない夢を持つ。
この答えの根本にある考えは、
――子どもは少しくらい大きすぎる夢を持ってもワクワクできるけれど、大人は大きすぎる夢を持つとワクワクできない。ちょうどよい大きさの夢を持つ必要がある。
という考えです。
――夢の大きさ
とは、
――夢の叶えにくさ
と、だいたい同じである、と――
のべました。
――ちょうどよい大きさの夢
というのは、
――叶うか叶わないかが、すぐにはわからない夢
ということです。
例えば――
大人は、
――世界中に子会社がある大きな会社の社長になる。
という夢を持つと、ふつうはワクワクできません。
が――
子どもなら、ワクワクできる――
なぜでしょうか。
子どもは、大人よりも何十年か多く時間を残しているからです。
それだけ長く時間を残していれば――
かなり大きな夢でも――つまり、かなり叶えにくい夢でも――
ひょっとしたら、叶えられるかもしれない――
が――
大人は、ちがうのです――そんなに長くは時間を残していない――
むしろ、子どもより何十年か多くの時間をすでに使ってしまっているのですね。
その時間を使って、これまでに、どれくらいの大きさの夢を叶えてこられたのか――あるいは、叶えてこられなかったのか――が、よくわかっている――
だから――
大人には、わかるのです。
自分は、残りの時間を使って、どれくらいの大きさの夢が叶えられそうなのか――
そのギリギリの大きさをねらって――
大人は夢を持つのです。
例えば、
――自分が作りたい料理を作ってお客さんに食べてもらうレストランを開く。
とか、
――自分のかいた絵をインターネットを通して世界中の人たちにみてもらう。
とか――
『10 歳の頃の貴方へ――』