ロシアとウクライナとの戦争について――
何日か前に、10才くらいの人と話をしていて――
こんなことをきかれました。
「どっちが勝ってるの?」
……
……
良い質問と思ったので――
ぼくは、次にように答えました。
「戦争では、どっちが勝ってるかとか、どっちが負けてるかってことは、なかなかわからないんだよ」
……
……
戦争はスポーツの試合とは違(ちが)うのです。
例えば――
ロシアとウクライナとがサッカーの試合をしているのであれば、
――どっちが勝ってるか。
とか、
――どっちが負けてるか。
とか、
――引き分けてるのか。
とかいったことは、わかります。
サッカーの試合では、ルールがあり、審判(しんぱん)がいるからです。
戦争では、ルールがなく、審判もいません。
実は、ルールはあるのですが――「戦時(せんじ)国際法(こくさいほう)」といいます――多くの人たちは本気では守りません。
なぜ本気で守らないのか――
わかりますか。
……
……
けっきょくのところ――
戦争は、
――殺(ころ)しあい
であるからです。
自分たちが殺されるかもしれないというときに、ルールを守るのは、とてもむずかしいことです――殺されてしまえば、それで、おしまいですから――
……
……
ルールもなく、審判もいないので――
今、ロシアとウクライナとの戦争で、どちらが負けつつあるのか、あるいは勝ちつつあるのか、あるいは引き分けつつあるのかということは――
わかりません。
ルールがないから、勝ち負けの目安がわかりづらく――
また、審判がいないから、勝ち負けの判断を下す人がいないのです。
ちなみに――
ロシアの人たちやウクライナの人たちは、どちらも、
――私たちが勝ちつつある。
といっています。
そういっておかないと――
負けていることにされてしまうからです。
本当のところは、どちらが勝ちつつあるのか、あるいは、どちらが負けつつあるのかをはっきりさせようと、実際(じっさい)に戦場へ行って、いろいろと調べている人たちもいるのですが――
ある人は、
――ロシアが勝ちつつある。
といい――
ある人は、
――ウクライナが勝ちつつある。
といいます。
本当のところは、よくわかりません。
それが戦争です。
『10 歳の頃の貴方へ――』