――民主主義(みんしゅしゅぎ)には、どうしようもない欠点があるのではないか。
とか、
――実は権威主義(けんいしゅぎ)のほうが民主主義よりも優(すぐ)れているのではないか。
とかいった考えが――
ここ 10 年で広まり始めている――
と、きのう、のべました。
実は――
こうした疑問(ぎもん)は目新しいものではありません。
民主主義が世界中へ本格的(ほんかくてき)に広まり始めた 100 年くらい前から――
何となく、みんなが思っていた疑問でした。
この疑問に答えを出した人がいます。
今から約 70 年くらい前まで、
――イギリス
という国で総理大臣(そうりだいじん)を2回にわたって務(つと)めたウインストン・チャーチル(Winston Churchill)という人です。
この人は、政治家(せいじか)でありながら、ノーベル文学賞(ぶんがくしょう)という文芸の賞をもらうほどに、言葉づかいの上手な人でした。
このチャーチルが、次のような言葉を残しています。
チャーチルはイギリス人ですから――
残した言葉は英語です。
――It has been said that democracy is the worst form of government except all the others that have been tried.
日本語に訳(やく)すと、
――民主主義は最悪の政治(せいじ)形式であるといわれつづけている――これまでに試されている他のいかなる政治形式をも別にすれば――
となります。
ちょっと難(むずか)しいですね。
わかりやすく説明をしましょう。
ここでいう「政治形式」というのは、
――国の治め方
くらいの意味です。
この言葉がなくても、意味は通じます。
また、「これまでに試されている他のいかなる政治形式」というのは、
――民主主義でない政治形式
ということです。
つまり、
――非民主主義(ひみんしゅしゅぎ)
のことであり――
要するに、
――権威主義
のことです。
よって――
チャーチルの言葉をわかりやすく書きなおすと――
次のようになります。
――民主主義は最悪だ――権威主義を別にすれば――
いいかえると、
――民主主義にはヒドい欠点があるけれど、権威主義に比(くら)べたら、マシだ。
です。
『10 歳の頃の貴方へ――』