マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

ABC予想は“人の世界観”をひっくりかえしている

 ――ABC予想

 は――

 他の“数学の予想”と比べれば、もちろんのこと――

 他の“科学(かがく)の仮説(かせつ)”と比べても――

 まさに、

 ――科学の仮説

 と呼(よ)ぶに相応(ふさわ)しい内容(ないよう)である――

 と、11月8日に、のべました。

 

 ここでいう、

 ――「科学の仮説」と呼ぶに相応しい。

 というは――

 ――人の世界観

 に深く関わっていて、しかも、その世界観は、あるときに急に変わってしまうかもしれない予感を秘(ひ)めている――

 という意味であると――

 おととい、のべました。

 

 そのような、

 ――科学の仮説

 の代表的な例の1つとして、一般(いっぱん)相対性(そうたいせい)理論が挙げられる――

 ということは――

 きのう、のべた通りです。

 

 きょうは、

 ――ABC予想

 について、のべましょう。

 

 ――ABC予想

 の、どの部分が、

 ――「科学の仮説」と呼ぶに相応しい。

 といえるのかについて――

 です。

 

 ……

 

 ……

 

 ――ABC予想

 の内容は――

 以下の通りです。

 

   *

 

 1 以上の整数 a、b、c が、

  a + b = c

をみたしている――

 a、b、c は、たがいに 1 以外の公約数をもっていない――

 ここで、a × b × c という整数を考える――整数 a × b × c は 2 以上である――

 整数 a × b × c の約数である整数のうち、その整数自身および 1 以外に約数をもたない整数を1つずつ取りだし、それらをすべて掛(か)け合わせてできる整数を d とする――

 このときに、どんな数 ε に対しても、

  c > d Λ( 1 + ε )

 をみたす a、b、c の組み合わせは、無限(むげん)には存在(そんざい)をしないであろう――

 

   *

 

 

 この予想が直接的(ちょくせつてき)に示(しめ)していることは――

 実は、そんなに大切でも面白くもないということは――

 10月29日に、のべた通りです。

 

 大切で面白いのは――

 この予想が間接的(かんせつてき)に示していることであり――

 それは、

 ――掛け算のことと足し算のこととは、ある不等式で分けて考えることができる。

 ということです。

 

 この、

 ――掛け算のことと足し算のこととを分けて考えることができる。

 というのが――

 驚(おどろ)きなのですね。

 

 正しくは、

 ――掛け算のことを足し算のことから切りはなして考えることができる。

 ということです。

 

 この逆(ぎゃく)――つまり、

 ――足し算のことを掛け算のことから切りはなして考えることができる。

 ということは――

 算数を学び始めた人なら、だれもが知っています。

 

 ――足し算のことを掛け算のことから切りはなして考えることができる。

 とは、

 ――掛け算を知らなくても足し算はできる。

 ということです。

 算数を学び始めたときは、だれもが体験をしているはずです。

 

 が、

 ――足し算を知らなくても掛け算はできる。

 というのは――

 おそらくは、だれ一人、体験をしていません。

 

 そんな体験がありうる――

 というのが、

 ――ABC予想

 によって間接的に示されていることなのです。

 

 これは、まさに、

 ――「科学の仮説」と呼ぶに相応しい。

 といえます。

 

 たしかに、

 ――人の世界観

 をひっくりかえしている――

 といえます。

 

 『10 歳の頃の貴方へ――』