どんな算数・数学を作って使っているかを調べることによって――
例えば、宇宙人(うちゅうじん)の脳(のう)のことをあれこれと推(お)し量ることができるであろう――
と、きのう、のべました。
それくらいに――
算数・数学の在(あ)り方は――
脳の内部における、
――大量の“電気の信号”のやりとり
の起こり方のルールと直接的(ちょくせつてき)に結びついているのではないか――
ということです。
算数・数学は、いわば脳の内部をのぞきみることができる窓(まど)のようなものです。
が――
この、
――算数・数学の“脳の窓”としての役割(やくわり)
に実感をもつことは、そう簡単(かんたん)ではありません。
なぜならば――
ぼくらは、たった 1 種類の脳しか知らず、また、たった 1 種類の算数・数学しか知らないからです。
脳に限(かぎ)らず――
ぼくらは 1 種類の体しか知りません。
今、地球上に棲(す)んでいる全ての生き物は――
たった 1 個(こ)の体の持ち主の子孫である――
と考えられています。
アリとゾウとヒトとをくらべると――
まったく別の種類の体をもっているように思えますが――
そうではないのです。
アリもゾウもヒトも共通の祖先(そせん)をもっています。
つまり、もともとは――おそらく、何十億年か前は――同じ体をしていたのですね。
また――
ぼくらは、どういうわけか算数・数学を 1 種類しか知りません。
言語なら、日本語や英語、中国語など、全部で 7,000 種類くらいも知られているのに――
算数・数学は、たった1種類しか知られていないのです。
よって、
――算数・数学は“脳の窓”である。
と、いわれても――
ぜんぜんピンときません。
もし――
この世界に家が 1 種類しかなく、また、窓も 1 種類しかなければ――
ぼくらは、
――家には窓がある。
ということをわかるようになるのに――
ずいぶんと苦労をするでしょう。
それと同じことです。
『10 歳の頃の貴方へ――』