英傑の条件は凡人たちが握っている。
これに思いが至れば――
20世紀イギリスの喜劇役者チャールズ・チャップリン(Charles Chaplin)の名言が、よくわかる。
――One murder makes a villain. Millions a hero.(一人を殺せば悪者で、数百万人を殺せば英傑だ)
英傑たちは、独り決断を下すのではない。
大多数の凡人たちの、
――声ならぬ声
を聴き取って――
決断を下す。
その“声ならぬ声”が、
――数百万人を殺せ。
であれば――
英傑たちは決断を下す。
そして――
数百万人を殺す。
逆に――
その“声”を、
――間違っているのでは?
と――
疑う者は、なかなか英傑とはなれぬ。
疑わぬ者は、たやすく英傑となれる。
……
……
英傑たちが非凡なのは――
大多数の凡人たちの、
――声ならぬ声
を聞き取るところまでだ。
ひとたび聞き取った後は――
きわめて平凡である。
『随に――』