ウクライナ政府の最高指導者が――
2022年のロシア政府によるウクライナ侵略を防ぐには――
どうすべきだったか。
一つは――
ロシア政府の最高指導者が、自分の政治生命を奪おうとは思わぬように振る舞うべきだった。
そのために――
ロシア政府の最高指導者と、あえて誼(よしみ)を結ぶなどの、
――わかりにくい政治
を厭(いと)わぬべきだった。
もう一つは――
ロシア政府の最高指導者が、自分の政治生命を奪おうと思っても、「まず奪えそうにない」と思わせる状況を作るべきだった。
具体的には――
自分自身の国家指導者としての胆力の確かさを――
国の内外に対し、事前に知らしめておくべきだった。
ロシア政府が武力行使に出るくらいでは、とうてい逃げ出すはずがない――
ということを悟らせておくべきだった。
ロシア政府が派遣をした特殊部隊の精鋭が、キーウの政庁の中枢を目指した時に――
ウクライナ政府の最高指導者は――
逃げなかった。
逃げずに戦った――
情報戦を巧みに闘った。
その勇気は、組織の指導者として、見事である。
人として簡単にできることではない。
が――
その稀有の才能を世に知らしむる時期が――
遅すぎた。
もう少し早ければ――
ロシア政府の最高指導者が、特殊部隊の精鋭をキーウに差し向けることはなかった。
何万、何十万という数の人たちが殺し合いを始める必要はなかった。
『随に――』