ロシア政府によるウクライナ侵略の戦争では――
2023年秋頃から次第に厭戦気分が漂い始めている。
ウクライナ軍が反転攻勢を仕かけ、
――思うような成果を上げられていない。
と判明をした頃である。
……
……
この数年で顔見知りになった高齢の男性がいる。
長らく防衛関連の職に就き――
今は引退をして別の職に就かれている。
この男性に、ロシア政府によるウクライナ侵略のことを訊くと――
「あれは親子喧嘩みたいなものですから――」
と仰るので――
「『親子喧嘩』ですか? 『きょうだい喧嘩』ではなく?」
と訊いた。
……
……
ロシアとウクライナとは、ともに、
――ルーシ
の後継国と自認をしている。
――ルーシ
とは、9世紀から13世紀にかけ、東欧・北欧にあった専制国家である。
日本語圏では、
――キエフ大公国
の名で知られていた。
同じ大公国を自国の祖と見なしているのだから、
(「親子」ではなく、「きょうだい」だろう)
と思ったのである。
が――
「いえ、『親子』です――『きょうだい』ではなく――」
と仰る。
「では、どちらが『親』で、どちらが『子』ですか」
と訊くと――
「どちらも『自分たちが“親”だ』と思ってるんじゃないですか」
と仰る。
それで合点がいった。
つまり、
――現実の親子喧嘩より遥かに凄惨な“喧嘩”である。
と仰っているのである。
「親子喧嘩というのは、なかなか終わりませんからね。大変ですよ」
(たしかに――)
と思った。
『随に――』