――ロシアとは、いかなる国か。
この問いに向き合う上で――
欠かせぬ理解が2つある。
1つは、
――ロシアは若い歴史の国である。
ということ――
その祖であるモスクワ公国が、モスクワ大公国となり、ロシア・ツァーリ国となり、ロシア帝国へとなっていった。
その過程のどこにロシアの歴史の起点を置くべきかは判然とせぬが――
それを最も早い時点に見出すとしても――
13世紀の後半――モスクワ公国の発足――である。
もう1つの理解は、
――ロシアは歪な構造の国である。
ということ――
モスクワ公国から身を起こし――
モスクワ大公国、ロシア・ツァーリ国、ロシア帝国と立身を遂げていく過程で――
ロシアは、東方に巨大な版図を得た。
シベリアである。
この新版図を――
日本の高名な歴史小説家は、
――巨大な左腕
に喩えている。
――右腕
は、東欧である。
その“右腕”は、矮小とはいわぬが、“左腕”よりも遥かに短小であることは確かだ。
ロシアは――
この“左腕”の先端に“虫”が止まると――
その“右腕”で払い除けねばならぬ。
が――
短くて小さいので、なかなかに払い除け難い。
1904年の日露戦争などは、“虫”を払い除け損ねた事例の典型として、ロシアの苦い記憶となっていよう。
『随に――』