文章を書いていると――
ときに酷く気分の高揚するときがあります。
不思議なものです。
酷く気分が落ち込むこともあるのですから――
僕の経験では――
鍵となるのは、その文章を書くまでの充電期間のようです。
充電期間が十分な場合は、何を書いても気分は高揚するのですね。
反対に、充電期間が不十分だと、気分は落ち込んでいく――
こうした傾向は、僕の場合、小説を書くときに、より顕著です。
小説を、充電しまくって書きはじめると、とても幸せな心地に浸れます。
小説書きの醍醐味を骨の髄まで味わっている気分です。
最高です。
が、充電しないままに書き始めると、えらい目に合います。
この世の全ての悩みを一身に背負ったかのような気分です。
最悪です。
だから、小説を書くにはエネルギーがいるのですね。
どっちに転んでも、それなりに大変ですから――
ところで――
*
今、僕は小説でないものを書いています。
科学入門書のようなものです。
だからでしょうか――
かなり心安らかな日々を送っています。
小説に比べれば、遥かに平穏無事な執筆生活です。
ふと、どなたかの言葉が思い出されました。
――小説を書かないでいると、小説を書くのが苦痛になる。
どなたの言葉だったでしょう。
偉い作家さんだったと記憶していますが――
その通りだと思います。
小説から離れすぎてしまうと、二度と小説には戻れないかもしれません。