人間というものは、本当に、どうしようもなく面倒くさいものである。
かくいう僕も人間なわけで――
多分、僕のことを、
――どうしようもなく面倒くさい。
と思っている人たちもいるには違いないが――
そういうことも引っくるめて、広い意味で――
人間というものは、どうしようもなく面倒くさい。
この、どうしようもなく面倒くさい人間たちで作られる社会を生き抜くためには――
一に寛容、二に忍耐、三、四がなくて、五に忘却――
これに限る。
昨日、NHKの『SONGS』という音楽番組に矢沢永吉さんが出演されて、俳優の浅野忠信さんに向かって、
――僕だって腹の立つことばっかりですよ。
みたいなことをいっておられた。
意外だった。
僕からみれば、矢沢さんは、何でも好き勝手に生き、それでも周囲の畏敬を集め続ける希有の才能である。
その矢沢さんでも、「腹の立つことばっかり」だという。
矢沢さんは、一見、自分勝手に生きているようでいて、実は、
――寛容、忍耐、忘却
の3語を肝に命じて――
日々の暮らしを送っておられるのかもしれない。
――永ちゃん
の凄みは、そこから来るのだろう。
人間というものは、かくも複雑な存在である。
それだけに――
一つ扱いを間違えると――
実に面倒くさい。