マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

アイドルとかではなくても

 ちょっと所用があって――
 昨日の午後から東京にいて――
 今日の午後に仙台に戻ってきた。

 で――
 仙台行きの新幹線に乗る前に、上野駅のベンチで時間を待っていたら――
 60代くらいの女性が二人、近寄ってきた。

 僕はベンチの中央のほうに座っていたので、その女性たちが並んで座れるよう、ベンチの端に寄った。

「あ、すみません」
 女性たちは二人とも愛想よく笑ってくれた。

 ベンチに腰掛けると――
 女性たちは荷物からアルバムを取り出し、あれこれと世間話を始めた。

 アルバムには、親戚の子供たちの写真が収められているらしかった。

 すぐ隣だったので、写真がみえた。
 着物姿の小さな女の子がニッコリ笑っている。
 七五三だろうか。

 その女の子の顔立をみては、ああでもない、こうでもない、と色々にコメントをはさんでいた。

 始終、聞き耳をたてていたわけではなかったので、詳細はわからない。
 たぶん、どちらの親の顔立に似ているかとか、この年頃の娘に当てはまる一般論とかについて、話をしていたのだと思う。

 ありがちな話だ。

 が――
 次のやりとりをきき、
(え?)
 と思った。

「この写真は、なに?」
「あ、これ? 一日署長――」
「ああ、あのときの――」

(一日署長?)
 思わずアルバムを覗き込んでしまった。

 七五三の写真と同じ女の子が、ピンク色のワンピースをきて、警官の帽子をかぶっていた。
 肩からはタスキがかかっていて、そこには「一日署長」と書かれてある。
 まるで、アイドルタレントが「一日署長」をするときのように――

(この子、何者なんだ?)
 と真剣に訝った。

 そして、
(このオバさんたちは?)
 と――

 それとも――
 警察の一日署長というのは――
 アイドルとかではなくても、なれるものなのか?

 謎である。