『覆面作家企画3“冬”』Dブロック(前半)の感想です。
覆面作家企画3“冬”
http://fukumennkikaku.web.fc2.com/3/index2.htm
覆面作家企画については、2008年2月1日の『道草日記』を御覧下さい。
Dブロック(後半)も間もなく、掲載いたします。
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D1 星下双酌
この作品、一人称で書かれているのですよね。
でも、すぐにそうとは気づきませんでした。「僕」や「俺」などの一人称代名詞が、地の文に確認できなかったからです。たぶん、敢えてお使いにならなかったのだと思いますが――
一人称をこんな風に書くこともできるのですね。
暗月のキャラクター造形が興味深い。
何か重大な事件に巻き込まれたときの対応を、みてみたいと感じました。
D2 十六年目の「ただいま」
最後の場面でラズが流した涙には、まだ続きがあるように感じます。
近い将来、誰かと結婚をし、その夫が自分の子の父親になったときに、自分の父親のことを思って、さらに気持ちが高まっていくのではないでしょうか。
娘と父親との関係には、僕も興味をもっています。
父親は娘を思い、娘も父親を思いますが、その思い方は全く異なると思うのです。
そうした父娘(おやこ)の断絶が、この物語の底辺にも、漂っているような気がしました。
D3 鏡からの訪問者
書き出しが印象的ですね。
――鏡は古来から別の世界と繋がっていると言われている。
という――
たしかに、鏡の向こう側に別世界が広がっていると想像することは、楽しいですよね。
そうした想像から着想を得た作品でしょうか。
D4 腐乱天使
人間の弱さが、よく伝わってきます。思わず身につまされました(笑
人間は、どこまでも冷酷になれますよね。とくに、自分よりも弱い者に対して――
もちろん、本当に強い人は、そうした人間の弱さも引っくるめて、黙って許すのでしょうが、なかなかそうはいきませよね。
主人公の最後の行動は、そうした人間の弱さに嫌気がさしてのことだったのかもしれません。
語り口が素晴らしい。引き込まれました。
文芸の正道ですね。
D5 巡礼とロバ
マンガの原作に向いている物語だと感じました。
ロバや巡礼の顔つきを、ぜひマンガでみてみたい――できれば、ギャグではなくシリアスで――(笑
そのほうがブラック・ユーモアも引き立つことでしょう。
物語の背景には重厚な世界像が見え隠れします。
が、作者様は、そうした世界像を細々と書き込むことは敢えてしていない――そんな印象を受けました。
D6 空を越えたら
読み始めた当初は、信也が、わざとデリカシーのない質問をしているのだと思いました。美智子をからかうために、です。
が、そうではなかったのですね(笑
ハッピーエンドで何よりでした。
こういうお話、僕も時には書きたくなりますよ、自分の心を和ませるために――(笑