マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

子供向けの本は低級ではない

 科学や医学の本は――
 専門家に向けて書くと、さも高級そうに仕上がりますが――
 実際には、子供に向けて書かないと、最高級の仕上がりにはならないと感じます。

 例えば――
 現代科学や現代医学の研究現場で議論されている関心事を子供にも理解させることはできるか。

 なかなか、できません。

 研究現場の関心事を把握している人は、子供でもわかるように書き表わす文芸技術を持ち合わせておらず――
 そのような文芸技術を持っている人は、研究現場の関心事を把握するのに長大な時間と手間とを要します。

 そうしたギャップを埋め合わせ、研究現場の関心事を子供にも理解させることができたなら――
 それは、本当にすごい――

 神業といってよいでしょう。

 たいていは、子供に理解させることはできません。

 ――ここから先は、話が難しくなりますから、皆さん、大人になってから勉強してください。

 みたいな逃げ口上で誤摩化さざるを得なくなります。

「話が難しくなる」というのは――
「私には簡単に書き表わすことができなかった」と白状していることに等しいのです。

 多くの人は、

  子供向けの本 = 低級

 という図式を信じています。

 そうではありません。

 少なくとも科学書医学書の世界では違います。

 子供向けの本に、最高級のものと、そうでないものとがあって――
 そうでないもののほうが圧倒的に多いという実態があるだけなのです。