文章には“乾いた文章”と“湿った文章”とがありまして――
“乾いた文章”というのは、
――事実と論理とに基づいて記述された文章
であり、“湿った文章”というのは、
――感情や情念が行間に描きこまれた文章
です。
感情や情念が、ただ描きこまれていればいい、というものではなくて――
行間に描きこまれていなければなりません。
文中に直接的に描きこまれていたら――
それは“破れた文章”とでもなりましょうか。
読むほうがいたたまれない気分になってしまう――
もちろん、そうした文章にも良さはあって、一概に否定されるべきではありませんが――
文章というものは、ところどころで破れているくらいがちょうどいいのであって――
始めから終わりまで破れっぱなしでは、ちょっと読むのがつらくなります。