――可もなく不可もなく――
などといいますね。
たいていは「とくに良いわけでもなく、とくに悪いわけでもない」くらいの意味でいわれていると思います。
ところが――
字面だけをよくみていると、
(それは、なんだか変だぞ)
と感じます。
例えば、大学などでの成績の評定は、通常は4段階で、
――優、良、可、不可
です。
この流儀に則り「可もなく不可もなく」を字面通りに解釈すると、「優もしくは良である」という意味になってしまいます。
これは明らかに不自然な解釈ですから――
実際には、「可」の中に「優」や「良」が含まれていると考えるべきでしょう。
つまり、「可もなく不可もなく」ということは、
――「可」でもなく「不可」でもなく、「優」や「良」でもない。
と解釈する――
ということは――
もう少し踏み込んでいえば、
――評定しようがない。
という意味になります。
あるいは、
――あえて評定する気にならない。
と――
実は――
この意味で「可もなく不可もなく」を使うことに、僕は、ずいぶんとシックリきます。
例えば、
――あの人の仕事ぶりは「可もなく不可もなく」だね。
というのは、「その人の仕事ぶりには全く関心がもてないね」と解釈したほうがよいのではないか、と――
身の回りでいわれている「可もなく不可もなく」を思い返してみたときに、
(たしかに、そうだよな)
と、妙に合点がいってしまいました。
普通に考えれば、「可」でもなく「不可」でもないということは、ありえないのです。
なぜなら、「可」が「不」で否定されているのが「不可」なのですから――
いってみれば、
――あの人は18歳以上でもないし、18歳未満でもない。
というのが、「可もなく不可もなく」の字面通りの意味です。
それは――
要は「その人が18歳以上だろうと18歳未満だろうと、どっちだっていい」ということでしょう。