きょうも、
――美・醜
の話を――
*
――美しいものをみようと思ったら、目は閉じなければならぬ。
とは、さる文豪の言葉だそうですが――
もし、そうならば、
――醜いものをみようと思っても、目は閉じなければならぬ。
といえそうです。
本当の美に、そう簡単にはお目にかかれないように――
本当の醜にも、そう簡単にはお目にかかれない――
もう少しハッキリいうならば、
――この現実世界には、「本当の美」も「本当の醜」も実在しえない。
ということです。
実在しえないものは心眼でみるしかない――
だから、「目は閉じなければならぬ」なのですね。
ところが――
人は、ふつうは美を好み、醜は嫌いますから――
わざわざ目を閉じてまで「本当の醜」をみようとは思いません。
つまり――
とっておきの心眼で「本当の美」を垣間見る人はいても、「本当の醜」を垣間見る人は、そうはいないでしょう。
ひょっとすると、人類史上まだ誰も目にしていないかもしれない――それが、「本当の醜」です。