――至上命題
という言葉がありますね。
――最優先で取り組むべき命令
――第一に解決されるべき課題
くらいの意味で使われます。
が、この言葉――
本来は誤用だといわれます。
もとは「至上命令」という言葉だったものが、いつしか「至上命題」ともいわれるようになったらしい、と――
――命題
とは――
本来は論理学や数学の世界で使われる術語です。
――真偽(真実か虚偽か)の判断の定まる主張
を指します。
よって、「至上命題」といってしまうと、「真偽の定まる主張のうち、もっとも優先されるべきもの」といった意味になってしまい、
(なんだ、それは?)
と訝られてしまうのですね。
なぜ「至上命題」が「至上命令」の誤用として頻発したのでしょうか。
一つは、「命令」という言葉のイメージの悪さが挙げられるでしょう。
何となく使いにくい言葉ではありませんか、「命令」という言葉は――
もう一つは、「命題」という言葉のイメージが、そんなに悪くないこと――
何となく客観的で中立的な言葉のように思える――
もう少し踏み込んでいうと、
――取り組むように命令された課題
といった意味の言葉にも思える――
「命令」と直接的に言及するよりは、「命令された課題」と間接的に言及するほうが――
言及するほうとしては、気が楽ですよね。
ということで――
ひょっとすると、「命題」が「取り組むように命令された課題」という意味で定着する日が近い将来あるのかもしれない、と――
僕は思っています。
言葉の誤用を正用として定着させようという発想が、僕は嫌いでありません。
言葉には絶えず進化していってほしい、と思うからです。