以下は――
実際に小耳に挟んだ話です。
……
……
運動も勉強も得意な中学生の男の子がいて――
ある時――
同級生の女の子に恋をしました。
その女の子は、運動も勉強も得意ではなく、また性格は素直でも誠実でもなくて――
どちらかといえば評判の悪い女の子でした。
が――
外見は誰の目にも明らかに整ってみえ――
学校の教室で黙って座っているぶんには、
――文句なしに美少女!
と思われるような女の子でした。
その女の子に男の子が恋をしたのは――
確かでした。
男の子は、ふだんは人前でも自信満々に振る舞うのに、その女の子の前では、まるで幼稚園児のようにモジモジと押し黙ってしまうのです。
が――
男の子は、自分が、その女の子に恋をしていることを――
決して認めませんでした。
同級生たちから、
「お前、あいつのことが好きなんじゃないの?」
と訊かれても、
「ちげぇよ!」
と否定し続けます。
しまいには――
当の女の子が、よせばよいのに、面白がって、
「ねえ、あなた、私のこと、好きなんでしょ?」
と声をかける――
すると――
男の子は声を震わせ、怒り出しました。
「うるせえなぁ! 誰がお前なんか好きになるかよ!」
……
……
典型的な恋愛トラブルです。
男の子は、女の子に恋をしている――
その意味で、男の子は女の子が“好き”なのです。
が――
男の子は、女の子を人として尊敬できていない――
その意味では、男の子は女の子が“好きではない”のです。
男の子は、たぶん女の子の整った外見に惚れ込んでしまったのでしょう――女の子の内面の問題に気づく前に――
一度ついてしまった恋の炎は――
そう簡単には消せません。
恋は、終わらせることができないのです――ただ終わるのを待つしかない――
これは、大変です。
抱きたくない恋心を抱いてしまうことほど――
つらい恋はないといってよいでしょう。
なぜ、こんなことになるのか――
それは――
男女の相性と人同士の相性とが基本的に別物だからです。
異性として魅力的だからといって、人として魅力的とは限りません。
この“相性のギャップ”に気づき――
それを少しでも埋めていくために――
人は、思春期以降、積極的に恋愛経験を積んでいくのが良いのです。
人として魅力的な相手を異性としても魅力的と感じられるようになるために――