恋には、
――再帰性
とでもいうべき性質があります。
――恋の再帰性
というと――
何だか酷く小難しく聴こえますが――
何ということはない――
昔から経験的によく知られている性質です。
すなわち、
――特定の異性と何らかの接点を持つことで、その異性に恋心を抱くようになったものの、その異性の実際の人となりをほとんど把握できず、自分の思い描く幻想上の人となりだけを頼りに、その恋心を保っていこうとする性質
ですね。
いいかえれば――
実在の異性に恋をするのではなくて――
自分の心の中の架空の異性に恋をすること――
です。
この再帰性は――
恋愛に不慣れな人たちに色濃く現れますが――
恋愛に慣れた人でも、多少は現れるものです。
たとえ、どんなに恋の手練れになったとても――
この再帰性を完全になくすることは不可能でしょう。
きのうの『道草日記』で繰り返し述べたように――
恋は人の体に起こる反応です。
自分自身の内に起こる特徴的な変化です。
もし、恋の再帰性を完全になくせたとしたら――
それは――
もはや、恋ではないかもしれません。