――人は人工知能に恋できるのか。
という問題意識があることを耳にし――
(そんなことをまだ気にしてる人がいるのか)
と驚きました。
というのは、
――恋できるに決まっている。
からです。
なぜ、そういえるのか。
……
……
恋は人の体に起こる反応です。
もちろん――
通常は、異性の人に対して起こる反応ですが――
人工知能に対しても――
十分に起こりうると考えられます。
なぜならば――
いわゆる、
――萌え
の概念が確立されて久しい今日――
人が、マンガやアニメ、ゲーム等のキャラクターに対して恋をしうることに――
もはや疑いの余地がないからです。
よって、「人は人工知能に恋できるのか」という問題意識は、もはや古いのです。
むしろ、
――人は、いかにして人工知能に恋をするのか。人に恋をする場合と比較し、何か相違点はあるのか。
と問わなければならない状況なのです。
ところが――
……
……
その逆の問題意識については――
答えを簡単には出せません。
すなわち、
――人工知能は人に恋できるのか。
という問いです。
この問いへの回答は――
残念ながら、慎重に吟味せざるをえないのですね。
恋は人の体に起こる反応です。
もし、人工知能が恋できるのならば――
その人工知能は、その恋を起こしうる仮想的な体を手に入れたことになります。
そのような“仮想的な体”が、いかなるものなのか――
ちょっと想像がつかないのです。
おそらくは――
人の体の感覚器や感覚神経および中枢神経によって構成されるシステムに相当するものとは思いますが――
その実態や原理を細かに描くことは――
そんなに容易ではないのです。