マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

人工知能は患者に共感を示せないか

 精神科医の仕事も、他の多くの職業の仕事と同じく、大半は人工知能に奪われるけれども――
 唯一、

 ――患者に共感を示すこと

 だけは――
 精神科医の仕事として残るであろう――
 ということを――

 きのうの『道草日記』で述べました。

 ……

 ……

 これは――
 裏を返すと、

 ――人工知能は、患者に共感を示すことができない。

 ということを意味しています。

 どういうことか――

 ……

 ……

 もちろん――
 人工知能でも、高度に発達を遂げれば――
 あたかも共感を示しているかのような言葉を選んで示すことはできるでしょう。

 造作もなくできると思います。

 が――
 その言葉の提示を受ける側――つまり、患者である人――の方に――
 根本的な問題があるのです。

 患者が――
 その人工知能を「人工知能」と認識している限り、真の意味での共感はありえません。

 「共感」とは、

 ――人と人とが感情を共有すること

 です。

 つまり――
 一方が、もう一方を、「人」と認識していなければ――
 共感は起こりえません。

 ……

 ……

 この問題は――
 あまりにも根本的すぎて――

 僕には――
 解決のしようがないように思えます。

 が――
 一つだけ、「解決策」といえなくもない解決策が考えられます。

 それは、

 ――人工知能が、自身が人工知能であることを隠して患者に向き合う。

 という解決策です。

 たちどころに倫理的な批判を浴びそうな解決策ですが――

 他方で、

 ――それで患者の症状が和らぐなら、安易に否定すべき解決策ではない。

 との擁護も起こるでしょう。

 結論は――
 患者の症状を和らげることの難しさをどのように受け止めるかによって――
 違ってきます。