マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

経営の名人・達人・神さま

 仙台駅前の老舗百貨店が破産し、閉店したというニュースを――
 きのうの昼にきいて――

 経営の難しさについて、あらためて感じ入りました。

 僕は仙台に住んでいるので――
 その百貨店のことも、まったく知らないわけではなく――

 むしろ――
 細かい用事をみつけては、ちょこちょこと利用しておりました。

 実際に店内に入って感じることは、
(だいぶ経営がヤバそうだ)
 という印象であり――

 その懸念は、ここ数年で、かなり高まっていました。

 簡単にいえば――
 店内の装いが何となく古びていて高級感が失われているにもかかわらず、ほとんど改装が行われない――
 若者向けの専門店などは目立つけれども、百貨店好きの中高年向けのブランドは見当たらない――

 これでは――
 金銭的に余裕のある客層は寄りつかず、百貨店として収益を上げることは夢のまた夢でした。

 ただ――
 そんなことは、この百貨店を経営していた人たちも十分にわかっていたでしょう。

 前身時代を含めれば70年の歴史があります。
 百貨店としての確かな地位を次代に継承させるべく、様々な策を練っていたと思います。

 が――
 資金繰りが悪く、ほとんど前向きな投資できなかったようです。

 ほとんど改装が行われないわけですよね。

 ……

 ……

 経営には名人と達人とがいる――
 という話をきいたことがあります。

 経営の名人とは、確実におカネを集め、的確に浪費を削(そ)げる人です。

 とにかく資金繰りが巧みなのですが――
 資金繰りを重視するあまり、他のことを軽視しがちになる――

 経営は破綻(たん)しないけれども、自分がやりたい商売はできなくなる――しなくなる――

 これに対し――
 経営の達人は、自分がしたい商売をやりつつも、経営は破綻させない――

 資金繰りを重視しすぎないにもかかわらず、なぜか資金繰りには困らない――

 こうした芸当が達人の域を越えると、

 ――神さま

 となる――

 ……

 ……

 きのう破産・閉店のニュースが駆け巡った老舗百貨店の経営陣は――
 名人になりきれず、かといって達人にもなりきれず――

 それでも、周囲から何となく“神さま”であることを期待され――
 重圧に押しつぶされたように思えてなりません。

 ――まさかホントに潰れるとは思わなかった。

 との街の声が報道されていました。

 もし、“神さま”が経営していたら――
 たしかに、破産も閉店もなかったでしょうね。