いわゆるネット購入では――
商品を手にする喜びを“前借り”しているようなところがあります。
――やった! 買った。ついに手に入れた!
という喜びから数日が経たないと――
実際に商品を手にすることができない――
そして――
手にした商品が期待ハズれであった場合には、
――なんだ、ぬか喜びさせやがって……!
と落ち込んで、“前借り”の喜びを返さないといけない――
……
……
この“前借り”の喜びをどのようにとらえるかが――
ちょっと気になっています。
……
……
――売買行為の空疎化だ!
と批判的にみる向きはあるでしょう。
たしかに――
商品それ自体はそっちのけで――
購入権利の獲得や金銭授受の決済だけを終えて満たされているのは、空疎といえそうです。
……
……
他にも――
否定的なとらえ方が色々とできるでしょうが――
僕は――
あえて肯定的にとらえたいと思っています。
すなわち、
――商品を買う喜びが純粋化されている。
というとらえ方です。
いいかえれば――
ネット購入では、“前借り”できるくらいに、商品を買う喜びが十分に単離され、抽出されているのではないか――
ということですね。
……
……
もちろん――
この純粋化は――
とくにネット購入に限ったことではなく――
通常の店頭購入でも、ある程度は生じているはずのことです――
実際、期待ハズれの“ぬか喜び”は店頭購入でもありますから――
……
……
ただ――
ネット購入だと――
その純粋化が先鋭するために、商品を買う喜びが強く意識されやすい――
ということではないかと思うのです。
……
……
どうやら、僕らは――
商品を購入する際に――
商品を手にする喜びだけでなく、商品を買う喜びにも触れているようです。
商品を買う喜びの独立性を意識できるという意味で――
ネット購入は貴重な手段かもしれません。