マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

くノ一の衣装

 ――くノ一

 といえば――
 今日、

 ――女忍者

 の異称として――
 虚構の世界ではおなじみですが――

 この「くノ一」――
 江戸期には、単に女性のことを指す隠語であったといいます。

 1950年代後半に忍者モノの小説が流行し――
 その物語群の中で、

   女忍者 = くノ一

 の図式が用いられたことから――
 しだいに、

 ――くノ一

 といえば女忍者を指すことになったといいます。

 僕は小学生として1980年代を過ごしましたが――
 その頃は、まだ、

 ――「くノ一」といえば「女」

 とのコンセンサスがあったように思います。

 が――
 2010年代の今は、「女忍者」の意味で使われることが、ほとんどでしょう。

 それくらいに、

 ――女忍者

 というアイディアが現実の世界にまで普及した――
 ということであろうと思います。

 ところで――

 ……

 ……

 一般に、「くノ一」といえば、

 ――ミニ・スカート風の着物に網タイツ様の鎖帷子(くさりかたびら)

 といった衣装が定番ですが――

 もちろん――
 この国で、近世までの諜報活動を担っていたと考えられる人々の中に――
 そのような衣装を身にまとっていた女性がいたことは――あるいは、そういう女性がいたことを示す史料は――確認されていなく――

 その衣装は――
 あくまでも――
 1960年代以降の映像文化の中で徐々に定着していったキャラクターのイメージです。

 ……

 ……

 こんなイメージを思い描くのは――

 どう考えても――
 男性ですよね。

 女性が思い描くとは――
 ちょっと思えません。

 ……

 ……

 きのうの『道草日記』で――
 僕は、

 ――「異性への幻想」という名の動機

 が作家には欠かせない、と――
 述べましたが――

 そのことは――
 例えば、ミニ・スカート風の着物や網タイツ様の鎖帷子を目にする度に思うことです。

 忍者モノの虚構の世界にドップリ浸かって考えるときに――
 これほどナンセンスな衣装もないと思うのですが――

 だって――
 あんな恰好で戦う必然性なんて、ありますかね。

 が――

 この点にこそ――
 僕は――
 この国の1960年代以降の映像作家たちの、

 ――執念

 といいますか、

 ――気骨

 といいますか――
 そういったメンタリティの凄味を感じます。

 ……

 ……

 どう考えたって――
 ナンセンスなんですけどね……。

 ……

 ……

 喩えるなら――
 数学の答案で、

 ――答えは合ってるんだから、考え方は書いてなくても、点数はくださいよ。

 と駄々をこねている学生のようなナンセンスです。

 ……

 ……

 いや――

 たしかに――
 答えは合ってますけど……(笑