マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

レオタードの起源

 レオタード姿の60代の女性が幸せそうにみえたという話を――
 きのうの『道草日記』で述べましたが――

 それは――
 ある意味では、必然です。

 ……

 ……

 レオタードは――
 19世紀フランスの人気曲芸師が――
 自身の肉体美を強調するために――
 わざわざ全身の筋肉にフィットする衣装を考案したのが始まり、と――
 いわれています。

 その曲芸師が追究していたのは――
 おそらくは、

 ――観念的な美しさ

 です。

 人の頭の中で、ある程度の計算を経て作られる肉体美ですね。

 そのような肉体美は――
 現実の世界には、なかなかに発見しがたいのです。

 現実のヒトの肉体は――
 十分に若く、かつ相応の鍛錬で整えていたとしても――
 観念的な美しさからはズレてしまうところが――
 どうしても生じてしまうものです。

 ある部分が――
 少し太すぎたり、少し細すぎたり――
 あるいは――
 少し緩みすぎたり、少し張りすぎたり――

 そうしたズレを補正するのが、

 ――全身の筋肉にフィットする衣装

 です。

 現実のヒトの肉体を――
 観念的なヒトの肉体美に近づける――

 この場合の「観念的な」は、

 ――虚構の

 といってもよいでしょう。

 ……

 ……

 よって――

 60代の女性がレオタードを身につけることで20代の肉体美を手に入れられるのは――
 レオタードの起源を考えれば――
 きわめて自然なことなのです。

 加齢によって生じていたはずの様々なズレを――
 レオタードは十全に補正していたはずです。

 ……

 ……

 ちなみに――
 今日、

 ――レオタード

 といえば――
 女性が着用するものと思われがちですが――

 実際には――
 そんなことはなく――

 男性用のレオタードというのも――
 数多く存在します。

 そもそも――
 レオタードを考案したとされる19世紀フランスの曲芸師は――
 男性でした。

 彼は姓を「レオタール」といい――
 その名が転じて、

 ――レオタード

 になった、と――
 いわれています。

 フランス語の読み方が英語流になったようです。