どうやら一定の合意に達したらしいことについて――
きのうの『道草日記』で触れました。
その後の報道によると、
――北朝鮮が外交的な勝利を収めた。
とか、
――アメリカは焦って譲歩をしすぎた。
といった論調が目立っているようです。
たしかに――
これまでの外交の常識に照らせば――
そのような分析が妥当なのでしょう。
が――
この会談に臨んだ両首脳が――
これまでの外交の常識を逸脱してきた事実は――
軽くありません。
現代の外交の常識に基づく分析には、あまり意味がない、と――
僕は考えます。
何といっても重要なのは――
両首脳とも、きのうの会談での合意を一方的に破棄する可能性は否定できない――
という点です。
和やかな表情で互いに手を握り合った当の相手に――
いきなり軍事攻撃をしかけるくらいのことは――
両首脳とも平気でやるでしょう。
その必要性を認めたとき――
他の政治家たちなら、いざ知らず――
彼ら二人は、ためらわずにやるはずです。
こう述べると、
――今時そんなバカをする政治家はいない。
とか、
――現代の外交の常識を無視した見方だ。
と嘲られるかもしれませんが――
長い人類の歴史の中では――
そのような現代の外交の常識の全くあてはまらない権力者たちが数多くいたことを――
僕らは、決して忘れるわけにはいきません。
……
……
北朝鮮が外交的な勝利?
本当に――
そうなのでしょうか。
……
……
北朝鮮政府は――
きのうのアメリカ政府の「大盤振る舞い」ともとれる譲歩によって――
逆に、
――追い込まれた
とみることはできないでしょうか。
今後、北朝鮮政府が――
この譲歩を損なうような行動に出たら――
今のアメリカ政府なら――
ひょっとすると――
有無をいわさず、警告なしで――
いきなり軍事攻撃をしかけるかもしれません。
北朝鮮政府にしてみたら――
もう、これまでのような奇策は――例えば、きのうの合意をあえて反故にしてみせるような奇策は、もはや――打てなくなったのです。
今回のアメリカ政府の譲歩は――
相手の喉元に匕首を突きつけているに等しい、と――
僕には感じられます。
強大な武力を背景に、
――いったん合意をしたからには、もう、きみらの好きにはさせない。
との警告を発するための“攻めの譲歩”であった、と――
僕は思います。
大局的には――
アメリカ政府のほうが、外交的な勝利を収めたのかもしれません。